【コラム】撮り鉄における「サンヨン」
機材紹介。
今回は70-200……ではなくそのサブで大活躍している超望遠のお話。
「Ai AF-S NIKKOR 300mm F4D」。
発売はなんと2002年という古さだが、2015年にPFレンズを用いて大幅に小型化した新型が登場するまでの13年間「新型サンヨン」であり続けた(ちなみにこの間にサンニッパは3回もモデルチェンジをしている)。なお現在も型落ちながら生産は続いており、ヨドバシなどでは実は新品で売っていたりもする。F6などにE型が対応していないための処置であろうが、まさに隠れた銘玉である。
1.買うまで
「安価な望遠」と言われるとやはり真っ先に思い付くのが150-600、もしくはニコンユーザーであれば200-500であるが、安価と言えど10万近くはする。当時は70-200を購入したばかりで、一方で望遠が急務という状況――そこまで金をかけられるわけもなく。そこで注目したのがこのレンズであった。
すでに型落ちして3年が経過していたこともあり、このレンズのヤフオクでの値段は既に5万を切っていた。これならいける。しかも70-200用に買ったTC14E2があり。これを用いて420mm/5.6の超望遠としても活用できるのも強みであった。購入するまでに時間はかからなかった。
2.描写性能
妥協したような選択であったが、このレンズは「単焦点」である。その性能は、圧倒的であった。
F4開放。開放からキリッと雨粒まで解像している。鉄道写真で特に重要となる後ボケに関しても見事で、ボケこそサンニッパほど圧倒的ではないにしろ解像度ではほぼどっこいどっこいだろう。(単焦点なので当然かもしれないが)70-200VR2よりも開放の切れ味は勝っている。
F5.6。一段絞ると非常に安定し、解像度はピークに達する。もっとも開放から優秀なのでほとんどその解像度に差はない。
色のり、コントラストも良好で何も不満がない。2002年生まれのレンズとは思えぬ映りで、後継がなかなか出なかったのも頷ける。流石は単焦点レンズか。
F8。夙川の桜を駅のホームから。めしべおしべの先までキッチリと描写しつくしている。また、後ボケは大変素直。ただし、前ボケは少々硬調である。
サンニッパと比べて寄れるので、花などを撮るときはこちらの方が分があるか。
テレコン耐性についてだが、TC14E2と組み合わせた場合開放ではほんの少し甘く、基本的には使用しない。ここはサンニッパとの差が大きい。
F5.6開放。わずかに甘い。200-500にも負ける。
F8まで絞るとシャープになりほとんど画質劣化はなくなる。とはいえその差はわずかで、気にするかしないかは人によるだろう。もはや陽炎かもしれない
総じてシャープなレンズであり、出てくる画に不満を持つ人はそういないだろう。
3.操作性/携帯性
操作について特に困ることはない。AFはそんじょそこらの超望遠ズームなど相手にならないレベルで速く、70-200と全く見劣りしない。頼もしい限り。ただしこの世代のAFはAF鳴きが起こりやすい傾向にある。状態をきちんと確認して買うべき。
このレンズを買う上で一番の問題となるのが手ぶれ補正がないことだろう。暗所の撮影では苦労を強いられる。
とはいえ、開放で他のズームレンズと比べて一段明るく開放からガンガン使っていける性能なことから曇り・雨程度では全く問題にならない。フレーミングさえしっかりすれば案外手持ちでも戦える。また、新型ミラーレスZ6/Z7ではボディ内手ぶれ補正が内蔵されこのレンズ最大の欠点も解消される見込みが立った。これからも末永く戦っていけそうだ。
携帯性についても、重量は1.4kgと重量級だが他の超望遠レンズと比べれば軽く持ち運びしやすいメリットは見逃せない。
4.結局はおすすめです
筆者自身は、サンヨンという選択肢を採ったことを全く後悔していない。使い方次第ではあるが、上手く使えば大変コスパのいい選択肢なのは間違いない。もちろん70-200を先に買うべきだが、その後超望遠の選択に困ったらこちらも検討してはどうだろうか。